(連載5回)

III 鏡の真実

んざりした顔をして、メドラーンが言い返した。できるだけ優しく言っているつもりのようではあったが、いらだっていることを隠しきれない。「お前の苦しみをとりさって、ハッピーにしてあげようというんだぜ。なぜそんなにいやがるんだい? ぼくたち一族の最高の技と、この最高の鏡の力があれば、どんな病気だって必ず直せるんだ。それが証拠に、僕はお前と話をしている。ファンタージエンのどんな生き物だってお前に近付くだけで燃えてしまうはずだ。なのにこうして大丈夫なのは、最高の技と鏡の最高の魔法のおかげなんだ。」

そして、今度はアトレーユに向かって説明をはじめた。「この鏡はね、最高なんだよ。」手に持っている一枚の小さな鏡をアトレーユに見せながら話し続けた。その鏡は、普通の手鏡ほどの大きさで、黒い縁どりがしてある。縁どりの一番上には銀色に蜘蛛が描かれていた。良く見ると、縁どりは蜘蛛の巣の外側の部分で、内側の鏡のところにもうっすらと蜘蛛の巣の形に銀色の糸のようなものが見える。「鏡に向かって知りたいことの言葉を念じると、ファンタージエン中のあらゆる知識がこの鏡で手に入るのさ。『あらゆる』というのは言い過ぎかな。この鏡を同じように持っている人の知っていることや思っていることが、すぐに出てくるんだ。だから、同じような病気の人が、どうやったら治ったかをすぐに調べられるんだ。グラオーグラマーンの病気だってそうさ。僕が詳しくどんな具合かを聞いて、それを念じれば必ず答えが出てくるんだ。」